人間はもっと楽に生まれていいんじゃないだろうか

 

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人間は汚い

 

というのが思春期に差し掛かった頃の私の認識

 

あちらから、こちらからと、中途半端な毛が生えていて

それが成長と共に濃くなってくる

 

毛穴が開いてくるし

毎日食べて何かを排出して

 

常に体液を放っているからお風呂に入らないと臭くなるし

 

数十年生きただけでしわくちゃになって醜くなる

 

それを隠すために皮膚に何かを塗り続けないといけないし

塗ってもまた体内から放たれる液で崩れて汚い

 

 

 

そもそも産まれる時がグロい

 

血にまみれて肉を割いて大泣きしながら出てくる

生まれたての赤ちゃんも可愛いとは思えない

 

 

不謹慎だが

 

当時の私は思った

 

出産はグロい

 

 

 

小学5年生の時に出産のビデオを見たときは、あまりにもショッキングだった

そのうえ性行為をしないと妊娠しないと知り、めちゃくちゃに落ち込んだ

 

 

愕然とした

 

 

いつか自分も母親になるという希望は

 

 

性行為をしないといけない

それを親に話さないといけない

しかもめちゃくちゃ痛くてグロい出産をしなくてはいけない

という現実で絶望に変わった

1人で少し泣いた

 

だから10代後半はせめて綺麗であろうと必死だった

 

脱毛に通い

清潔感がある程度の化粧をして

お風呂に入って

見た目を気にして

人前ではなるべく排泄作業をしている雰囲気すら出さないように気を使った

 

 

こう見ると人として当たり前なのかもしれないが

モチベーションが

「汚くなりたくない」

だったからいつもどこかキツかったし不安だった

 

そもそも

「人間は汚い」

前提であるから

汚くないという状態であるのはめちゃくちゃに努力が必要であったし

どう頑張ってもいつもちょっと汚い自分に対して嫌悪感と焦りがあった

 

 

そんな思春期を過ごし、大人になって少し経った頃

 

 

「汚くなりたくない」

というモチベーションはだいぶ薄れていた

 

恋愛や同棲を経験した事が大きいと思う

自分の肉体を受け入れてくれる人がいて

 

「そもそもみんなそうなんだから別にいいや」

的な考えになった

 

思春期特有のぶれやすい自意識に少しの軸が通ったのもあったのだろう

 

 

「人間なんだから

毛だって生えるし

ちょっと匂いがする時もある

それもホルモンを感じて良いし

老化もする

性行為には悦びもある

出産は大変そうだけどそれに耐えられるなんて人間は強い

たくましい

それが人間なんだ」

 

なんて境地を感じていた

 

10代の頃は少しの産毛も気になり、暇があれば毛を抜いていたが

大人になり念願叶って通い始めた永久脱毛も途中でやめた

 

毛も理由があって生えている

ホルモンを運ぶ作用もある

毛があった方が自然で人間的

 

という理由からであった

 

「人間は汚い」

という考えがおかしいと思い

 

「それが人間」

 

という境地に至った

 

と思っていたが

今また

 

「やっぱり人間は汚い」

という考えに戻ってきている

 

 

 

やっぱり毛穴は嫌だし

なぜか生える毛も汚らしい

常に食べ、排泄が必要な肉体に

その繰り返しで簡単にへたり老化していく体

 

それにやっぱり出産はグロい

 

 

一緒に育った友人たちも出産を経験し、話も聞いた

第一声はみんな

痛かった

という

 

 

「痛い」

 

 

「感動」や「嬉しい」

とかではない

 

早く痛みから解放されたいから頑張って産むらしい

もう産むしかないから

産まないと痛いから

 

 

身近な例を見てみても、他の視点から見て神格化してみても

出産自体はやっぱりグロいし怖い

 

約一年、肉体にものすごい負担をかけて体内で人間を育む

そんな肉体を割いて血にまみれて世に出てくる

しかもしわくちゃの顔で大泣きしながら

 

その様が美しいと

みんな本当に思っているんだろうか

 

人が生まれる事は奇跡で

生命の尊さ、女体の神秘

 

それは確かにそうだと思う

 

 

でも出産が美しいかと言うと

やっぱりそうとは思えない

 

骨が軋んで内臓を圧迫して

ものすごい痛みに耐えて大量に出血しての出産

 

そのために妊娠せずとも毎月の出血もある

 

 

エデンの園を出た罰として与えられた苦しみ

という解釈の方がしっくりくる

 

これは罰だ

 

人間を作った神様がいるなら

出産に関してもうちょい何とかならんかったかねと言いたい

 

ちょっと酷すぎるよって

罰重ない?って

 

というかなんで罰与える?って

 

 

おかしい

 

もっと綺麗でいい

人間が生まれるのも

もっとスマートであって良い

 

グロくなくても人は感謝し感動できる

 

クレープを作る様で夢中になれるんだから

錆びた包丁を研ぐ動画が何百万回と再生されるのだから

 

人が出来上がる様子なんて

血にまみれて痛みに耐えなくても涙を流しながら見守れる

 

何かがおかしい

 

この世界は何かがおかしい

 

苦しまないといけない

苦しみから生まれる幸福という前提が何かおかしい

 

人はもっと楽に生まれていいし

もっと楽に幸せであっていい

 

苦しみも不幸も通過せず、楽しく幸せであってもいいんじゃないか

 

数十年生きただけでしわくちゃになる必要なんて本当はないんじゃないか

そもそも死ぬ数時間前に老化する

くらいで良いんじゃないか

 

何ジワジワ老化してるんだ

生きる上で非効率だろうが

 

 

もっと綺麗で

もっと元気で

もっと楽しく幸せで良いんじゃないかと

 

今の

誕生と老化と死に関する常識は

何かがおかしいと

 

そんな風に私は思う